昨日から引き続いています市民講座の講演紹介はこれで最後になります。
昨日までが第1部内容でしたが、共通していることは、がんになったからと言ってすべての生活をそれ一色にすることはなく、むしろがんだからこそ楽しく生活できる方法を考えることが「がん」という異物に対して目に見えない薬にも感じました。向井さんの1分後にイメージしたことが実際に出来た時の喜びや、浜田さんの楽しく生きるためにはどうすれば良いか、心の中の笑顔は100%の言葉も全てそれに通じるものがありました。がんに限らず病気になった時は、まず相談してみる、正しい情報と知識を得る、自分が今出来ることを考え前向きな心を持つよう心がけたいです。ただ、全ての方がそんな風に出来ない事も確かでそこは難しいですが、1年に1回は健診を受ける意識が1人1人に根付くことで体調管理や予防にも役立つのではと思いました。
20分間の休憩中の司会のムーランさんが中心になり、乳がんリハビリ&自己検診体操「のの字の歌」を踊りました。司会のムーランもまた鼻の奥の超希少な「鼻中隔がん」というがんを患った方です。顔面と開頭手術で丁度りんごの芯をくり抜くような大手術を受け、その為嗅覚はなくなり顔のど真ん中は空洞になっているそうです。女性で顔面を手術するという事は想像に絶するものがあります。しかし、それが何?と思えるくらいのパワーが溢れていて、ピンクのTシャツに着替えた姿で皆と楽しく踊っていました。近くでお姿を見ましたが、溌溂という言葉がぴったりの方で今を楽しく生きている姿が印象に残りました。
第2部は、患者が知りたい最先端医療がテーマです。
4講演目は、複十字病院 乳腺センター長の武田泰隆先生から乳癌についてのお話がありました。興味深いと感じたことは、1個のがん細胞が1cmの乳癌に成長するまでに約7年半位かかるとのことでした。そこからは、急速に成長するそうです。1cm前後が色々な意味での境目なのかも知れないと感じました。また、女性では大腸がんが死亡率№1ですが、意外にも乳癌は、上位では ありません。乳癌の罹患率は、№1なのですが死亡率は低く「予後のよいがん」とのことでした。乳癌は生命維持に絶対必要ではない臓器ともお話しされていました。更に質の高い乳癌治療とは根治性と整容性の両立を挙げていました。ただ、双方相反するものなので両立は難しく、根治性を取れば、整容性に影響が出てしまい、整容性を取れば根治性が低くなるが一般的のようです。複十字病院ではそれを可能にするVABCS手術という術式を行っています。スライドで実際の術式や説明などここからは医学的な分野でのお話でした。乳癌で切除が必要な場合、生命維持に必要ないと言われても、人目に分からないと言われても心に大きなダメージを受けることは必須です。その後の抗がん剤治療で髪が抜けることも考えると大半の女性にとり乳癌は他のがんと比べ少し位置づけが違うように思いました。最近は、乳房温存や再建手術なども積極的に行われ医学的にも進歩が目覚ましく、最先端医療を受けられる病院も増えてきました。多くの方々が最善の治療受けられるようになるためにも、このような最先端医療を知る機会がもっと広がって欲しいです。
第2部の5公演目は、東大病院の特任教授の垣見和宏先生から東大病院での免疫療法で肺がんに対するγδT(ガンマテルタT)細胞治療についてのお話しがありました。あまり聞きなれないγδTという用語ですが、γδT細胞とは、簡単に言えば細胞に傷害をきたす様々なストレスを感知し、迅速に生体防御反応を誘導する役割をもった細胞です。細菌感染やウイルス感染などの外からのストレスに加えて、がんになりそうな細胞の変化に対しても敏感に感知することが出来るそうです。肺がん治療は、がんの進行程度や体の状態などから検討します。治療する上で勝手な治療はしない(ガイドラインがありそれに詳細が掲載されている)ことを大切にし、プレシジョン・メディシン(精密医療)や免疫チェックポイント阻害剤についての説明がありました。がんと闘うリンパ球を作ることが必須とのことでした。
このために必要なこととして成分採血をし血液に含まれるリンパ球の層だけ採り出し、培養し良い状態で30分くらいかけて点滴を打つそうです。但し、この治療は6回に分けてあることと1回分の培養代が高額であり総額にするとかなりの負担です。現在は、様々な医療保険もありこのような治療に対応している保険であれば負担が軽くなるとお話しがありました。また、治療を受けたい方は主治医と相談してから連絡してくださいとのお願いされていました。
閉会の挨拶を東大病院 がん相談支援センター副センタ―長の分田貴子先生がされました。
ご挨拶の中で、前向きに生きることの大切さやがん相談支援センターの活用をお願いされていました。現在、がん相談支援センターを設置している病院が東大病院の他にもありますが、どの病院でも同じ質の対応が受けられるかというとやはり温度差があるとのことでした。その中でも、東大病院の相談員の質は高いと自負しているとおっしゃっていました。
大学病院と言うと敷居を高く感じますが、どなたでも利用できる支援センターやイベントなどを利用することで正しい情報と治療法に役立てて欲しいと思います。病気になっても日常生活をいかに快適に過ごすかでその後の生き方も変わってきます。病気にならないように予防をすることも大切ですが、もしなってしまっても相談窓口があるという事をもっと多くの方に知ってもらいたいです。また、自分の加入している医療保険の見直しやかかりつけ医を持つことも大切だと感じました。
最後に、東大病院では、月に2回外見ケアイベントを開催しておりどなたでもご来場できます。ベリー&ローズも毎回ブースを出させて頂いています。ここでは、数社のウィッグ会社やエピテーゼ(人体修復物)を作製している会社等のブースがあります。無料でネイルやメイクもしてくれるブースもあり気軽に立ち寄れます。会場には、分田先生もおられゆっくりと商品を見ることや試着が可能です。今月は、10月24日の火曜日に開催されます。お時間のある方はぜひご来場下さい。また、女性にとって髪の毛の問題は切実なものです。今回講演を聞いたことでがんにかかわらず病気になると失われるものが多いと改めて感じました。そういった方の気持ちに寄り添い少しでもその悩みが軽減されるお手伝いをさせて頂けたら幸いです。